韓国で市中金利が上昇、家計債務リスクに危険信号
韓国の都市銀行の家計貸出金利がここ半年の間に0.6%上昇した。家計債務の増大を憂慮する金融当局の融資規制と、米国の国債利回り急騰が重なったためだ。対GDP(国内総生産)比で100%を超え、韓国経済が抱える最大の「爆弾」となりつつある家計債務が、一段とリスクを増した形と言える。
1日までに明らかになった情報を総合すると、KB国民・新韓・ハナ・ウリの主要4銀行の先月25日時点での信用等級最上位向け1年満期の信用貸付金利は、年2.59〜3.65%だった。昨年7月末に1.99〜3.51%だったのと比較すると、最低金利で0.6%上昇した。
韓国銀行が毎月発表する家計貸出の加重平均金利も上昇している。新規取り扱い額基準の家計貸出平均金利は、今年1月に2.83%となっており、昨年8月(年2.55%)から5カ月連続で上昇した。同じ期間、信用貸付の平均金利は2.86%から3.46%に0.5%上がった。
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住宅担保ローンも同様だ。先月25日基準で、4大銀行のCOFIX連動住宅ローン(新規取り扱い分)の金利は年2.34〜3.95%だ。昨年7月の2.25〜3.95%と比較して最低金利は0.09%上昇した。
原因は、銀行に対する金融当局の圧力と米国債利回りの上昇にあると見られる。銀行は昨年から、家計債務を抑制せよとの金融当局の方針を受け、優遇金利を縮小したり、融資限度額を絞ったりする方法で信用管理に乗り出した。ここに米国債利回りの急騰が重なり、主要国の金利も上がって、韓国のローン金利に波及したのだ。
金利の上昇を受け、新たに融資を受ける人はもちろん、既存の債務者も利子負担が重くなりそうだ。信用貸付と変動金利型の住宅ローンは、3〜6ヶ月ごとに金利を再調整する。韓国銀行の統計によれば、銀行の家計貸出に占める変動金利ローンの比率は7割近くにもなる。
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さらに、韓国では今後も、市中金利の上昇につながりそうなイベントが続く。韓国政府は新型コロナウイルス対策の補正予算確保に向けて赤字国債の大量増発を行う方針だ。国債の発行量が増えれば利回りが上昇し、市中金利も連動して上がる。市場では、赤字国債の供給が過剰気味であることを知らせるシグナルがすでに表れている。
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また、政府傘下の金融委員会は、総負債元利金償還比率(DSR)の管理強化を柱とする新たな家計債務の管理指針を近く発表する。DSRは、借主の所得に対する元利金返済比率を表すものだ。
現状、各銀行は家計貸出の残高を総合して、借主のDSRが平均40%以内に収まるよう管理してきた。借主別に見ると、DSRが40%を超える人もいるということだ。これが新指針では、借主基準でDSRを管理することになり、元利金返済額が所得の40%を超える融資はできなくなる。借り手としても、これまでと比べ融資を受けにくくなり、ローン商品の価格である金利には上昇圧力が働く。
特に昨年来、信用力を限界まで動員して「ヨンクル」と呼ばれる不動産投資にオールインしてきた債務者らは、わずかな金利上昇からも大きな影響を受ける。まだ兆候は表れていないものの、高騰を続けてきた住宅価格が反転すれば、その影響の度合いは致命的なものにもなりかねない。