韓国与党「重大犯罪捜査庁」新設を推進…検察の捜査権はく奪
韓国の与党・共に民主党が、検察に代わり6大犯罪の捜査のみを担当する新たな捜査機関の設置構想を具体化している。実現すれば、検察は捜査機能をはく奪され、起訴・公判のみを担当することになる。
同党の黄雲夏(ファン・ウナ)議員は17日に出演したYTNラジオで、「重大犯罪捜査庁(仮称)」を来年7月に誕生させることを目指し、関連法案を今年上半期に成立させたい意向を明らかにした。また、同党の検察改革特別委員会に所属する朴柱民(パク・チュミン)議員も16日のMBCラジオで、重大犯罪捜査庁の設置に向けた法案を今月の臨時国会に提出し、6月までに成立させる方針だと述べた。
「捜査に空白」識者ら懸念
これに対し野党などからは、「政権に対する捜査を放棄しようとしない検察の解体を狙うものだ」「重大犯罪の捜査に空白が生じ、現実的でない」などの批判が出ている。
文在寅政権はこれまで、検察と情報機関である国家情報院の捜査権を縮小し、警察の権限を拡大する「権力機関の改革方案」を推進してきた。その中で検察と警察の捜査権の調整が行われ、検察は今年1月1日から腐敗(汚職)・経済・公職者・選挙・防衛事業・大型惨事の「6大犯罪」に限って捜査に着手できることになった。
韓国ではこれまで、検察が警察に対してほぼ全面的な捜査指揮を行い、裁判所に対する捜索・拘束令状などの交付申請も検察を通じてのみ行われてきた。しかし今回の捜査権調整により、警察は独自に犯罪嫌疑を認定し、検察に事件を送致する「捜査終結権」を付与された。検事が警察の請求に反して令状の交付申請を行わなければ、警察内の「令状審議委員会」を通じ異議を申し立てることもできる。
また、警察に対する検察の捜査指揮は補完捜査・是正措置・再捜査要求に限定されることになった。
一方、検察の捜査に当たることのできる範囲は大幅に狭められた。上記の6大犯罪に関しても、腐敗事犯の場合、特別犯罪加重処罰法の適用対象に該当し、賄賂の額が3,000万ウォン以上であるケースに限定される。公職者の犯罪についても対象者が4級公務員以上でること、経済事犯については被害額が5億ウォン以上の横領・背任・詐欺に限られる。
このような広範な構造調整が行われながら、1年も経たずに与党が重大犯罪捜査庁の新設を推進することに対して、野党や識者は強く反発している。
野党・国民の力のファン・ギュファン副報道官は16日、「検察改革との美名で国中を騒がせておいて、いよいよ検察の改革に乗り出そうというもの」だとしながら、「(任期が)残り1年となった政権が、政権に対する捜査を不可能にしようとする不純な意図」によるものだと批判した。
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一方、検察の捜査権縮小については「基本的には賛成」だとする検察OBのある弁護士も、「高位公職者捜査処がスタートしたばかりだが、実質的な捜査能力を備えるには2~3年を要する。担当範囲がはるかに広い重大犯罪捜査庁が軌道に乗るには7~10年はかかるだろう。その間に捜査の空白が生じるリスクはどうするのか」と話した。