韓国版ソーシャルレンディングが存亡の危機
個人投資家からお金を集め、資金が必要な人や会社への融資する――日本の「ソーシャルレンディング」と同様の業態である韓国の個人間取引(P2P金融)業者が、危機を迎えている。
昨年8月に施行された「オンライン投資連携金融業法(オン投法)」は、1年以内に最低5億ウォンの自己資本を充足することなどを義務付けている。しかし、業者の大半は同法の基準に満たない規模であるうえ、金融当局が法定上限金利(24%)の厳守を求めており、違反したと見なされれば実質的な廃業を余儀なくされるためだ。
金融業界からは、「P2P金融業界の健全な発展のためには必要な選別」であるとの声が聞かれる一方、廃業が続出した場合、個人投資家の被害が甚大となることへの憂慮も出ている。
オン投法の施行後、P2P金融業界は融資残高が減少する一方、延滞率は急上昇している。韓国P2P金融協会によると、加盟社平均の融資残高は2018年末の1兆799億ウォンから1年で1兆5386億ウォンと急成長。しかし昨年末には1兆3766億ウォンと、前年同期から10.5%減少した。融資残高の減少は、P2P業者による各種の詐欺事件が発覚したことによるイメージ失墜の影響が大きいとされるが、オン投法の基準をクリアすべきタイミングで深刻な逆風に見舞われた形と言える。
一方、延滞率は着実に上昇している。2018年末時点における業界の延滞率は5.78%だったが、1年後に8.43%まで上昇。昨年末には10.35%に達した。協会に加盟する44社の中には延滞率が30%を超える業者が12社もあり、最悪のケースでは89%に達している。未加盟の小規模業者まで考慮すると、業界の状況はさらに深刻かもしれない。
金融監督院は今月13日の制裁審議で、法定上限を超える金利で営業していたP2P金融業者6社に対し、3~6カ月の営業停止という極めて重い懲戒処分を議決した。処分は政府の金融委員会が来月の定例会議で最終的に決定するが、金融監督院の結論が覆されることはまずない。
処分が決定すれば、対象となった業者にとっては、業界からの追放を通告されるも同然である。オン投法では、金融当局から懲戒処分を受けた業者はその後3年間、政府に登録できないことになっており、営業の継続が不可能になるからだ。
今回、処分を受けた業者は、顧客から受け取るプラットフォーム利用手数料を金利に加えた額が法定上限金利を上回っていたことが問題視された。オン投法ではそもそも、こうした手数料を「見なし金利」と定めて規制対象としているが、業者は別法人がプラットフォームを運営する形を取り、これをくぐり抜けようとしていた。融資残高と延滞率の上昇により、実質的な金利を高く設定しなければやっていけない実情がうかがえる。
P2P業者は協会加盟・未加盟を合わせて240社に上るとされるが、現在までのオン投法の基準をクリアし、政府への登録を済ませた業者は5社にすぎない。このままでは大半の業者が登録に失敗し、廃業が続出する可能性もある。
そうなれば、個人投資家の被害は避けられない。
仮に登録が間に合わなくても、業者は引き続き貸付債権の回収を行う義務を投資家に対して負っている。だが、収益悪化により従業員の離脱が続けば、回収業務の効率は低下せざるを得ない。また、ある業者の関係者は「借り手の間で『つぶれた会社に返済する必要があるのか』といったモラルハザードが起きる恐れもある」との懸念を語った。