韓国金融当局に銀行反発…ライムファンド販売「重懲戒」巡り
一昨年から昨年にかけて相次いだ、私募ファンドの大規模な償還停止問題。その販売を担った銀行・証券各社に対する金融監督院の制裁審議委員会が山場を迎えようとする中、予告された懲戒のレベルを巡り、銀行圏から不満の声が噴出している。当局が自らの監督責任を回避すべく、法的根拠が薄弱なまま、経営トップへの重懲戒を乱発しようとしている、というものだ。
金融監督院は今月25日、ライム資産運用の主な販売窓口となったウリ銀行と新韓銀行に対する制裁審を開く。
同院はこれに先立ち、孫泰升(ソン・テスン)前ウリ銀行頭取(現グループ会長)に対して職務停止、晋玉童(チン・オクドン)新韓銀行頭取には問責警告を予告した。
懲戒レベルは重い順に解任勧告、職務停止、問責警告、注意的警告、注意の5段階があり、文責警告からが重懲戒となる。重懲戒を受けると、現在の任期終了後、役員再任が不可能となる。今後3〜5年の間、金融機関への再就職も禁止される。
ウリ・新韓の両行には、懲戒レベルは制裁審で調整されるとの期待もある。今月5日、ディスカバリーファンドとライムファンドを販売したIBK企業銀行に対する制裁審では、同行の被害者救済のための努力が認められ、問責警告を予告されていた金道鎮(キム・ドジン)前頭取に対する懲戒が、注意的警告に引き下げられた。
ウリ・新韓もまた、制裁審で被害者救済の努力をアピールし、懲戒レベルの引き下げを目指す意向だ。両行とも、ライムファンド購入者に全額賠償すべきとした金融監督院の勧告を受け入れており、元本の50%はすでに支払い済みだ。ウリ銀行の場合は損失確定を待たず、推定損失額を基準とした同院の紛争調停手続きにも同意している。さらに両行は、再発防止のための消費者保護対策の改善など、後続措置についても説明する。
それでも当局側からは「ウリ・新韓の制裁審は、IBKのようには行かない」との声が聞こえる。
金融監督院の関係者は「IBKが軽い懲戒で済んだのは、制裁の主な理由がディスカバリーファンドだからだ。ライムに比べれば、ディスカバリーは詐欺性が弱く、被害規模も小さい。IBKの結果を見て懲戒レベルの引き下げもあり得ると見るのは、銀行側の憶測に過ぎない」と語る。
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当局のこうした姿勢に対して銀行圏は、「被害規模ばかりを強調し、法的根拠が薄弱なままガバナンスの不備を理由に(重懲戒を適用)するのは無理がある」(銀行関係者)との反発する。
金融監督院は昨年5月、金融機関に対する検査および制裁の施行規則を改正し、「金融取引者の被害に対する十分な賠償など、被害救済の努力如何」を制裁量定で斟酌するとした。金融機関が被害者救済に積極的に取り組むよう、インセンティブを与えたものだ。
また、また昨年、DLF問題で重懲戒を通告された孫泰升ウリ金融会長が効力停止の仮処分申請を行った際、裁判所は金融監督院の懲戒が「抽象的・包括的な事由だけを提示しており、具体的な基準がない」と指摘している。
それにもかかわらず、金融監督院が金融機関の経営トップに重懲戒を突きつけるのは、「当局の私募ファンドに対する監督責任論から視線をそらすためではないか」(同)との疑念も持ち上がっている。
別のある銀行の関係者は「ガバナンスの不備だけを理由に経営陣に重懲戒の処分を下すのは、公正さを欠く。実際、経営トップが業務上の問題すべてに責任を負えるわけでもなく、法的根拠も薄弱だ。私募ファンドに対する監督失敗を多い隠すためにやっている印象は拭えない」と語った。