対政権捜査の担当検事ら留任…文大統領秘書官「辞意表明」影響か
韓国法務部は22日、軍死亡事故真相究明員会に派遣されていたナ・ビョンフン次長検事をソウル中央地検第1次長として復帰させるなどとする、検察の中間幹部クラス16人の人事を発表した。
今回の検察人事を巡っては当初、文在寅政権寄りの李盛潤(イ・ソンユン)ソウル中央地検長と対立する卞弼建(ピョン・ピルゴン)同地検刑事1部長が交代させられるとの見方が有力だったが、留任した。また、「月城原発経済性評価ねつ造」や「金学義(キム・ハグィ)元法務次官への違法な出国禁止措置」など、政権と関連する疑惑の捜査を担当している検事らも留任した。
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法務部は、秋美愛(チュ・ミエ)前長官在任時の数回にわたる人事で、政権や与党と関連した疑惑の捜査を担当する検事らを大幅に入れ替えてきた。また、秋氏の後任となった朴範界(パク・ボムゲ)長官も今月7日に発表した幹部人事で、尹錫悦(ユン・ソギョル)検事総長と対立する李盛潤地検長と沈載哲(シム・ジェチョル)法務部検察局長(現ソウル南部地検長)を留任・栄転させる一方、尹総長の側近である韓東勲(ハン・ドンフン)法務研修院研究委員(検事長)の一線復帰を拒絶していた。
こうした経緯から、今回の人事でも卞弼建部長検事や対政権捜査に関わる検事の一部が交代させられる可能性が取り沙汰された。卞検事は「チャンネルA事件」を巡って「韓東勲検事長に嫌疑はなく、捜査を終結すべきだ」と主張し、李盛潤地検長と衝突した。また、違法な出国禁止問題では、秋美愛前長官と李盛潤地検長に疑いの目が向けられている。
しかしフタを開けてみれば、今回の人事はごく小規模にとどまり、対政権捜査に直接影響しそうな措置は取られなかった。この間の秋美愛前長官と尹錫悦検事総長の対立激化が政権・与党の支持率低下に影響したと見られるのに加え、朴範界長官の人事決定プロセスへの不満から、申炫秀(シン・ヒョンス)青瓦台(大統領府)民情首席秘書官が任命からわずか1カ月半で辞意を表明したことが影響したと見られる。
韓国の検察人事は、法務部長官が検事総長から意見を聞いて行うことが法律で定められており、さらに民情首席秘書官を交えて協議するのが慣例となっている。しかし朴範界長官は7日に発表した幹部人事案を固めるに当たり、尹錫悦総長の要望を反映せず、また申炫秀秘書官に知らせることなく、文在寅大統領から直接裁可を得ていた。
法務部と検察の関係修復に努めていた申炫秀秘書官は、朴範界長官のこうしたやり方に反発。今月9日と中旬の2度にわたって辞意を表明していた。「元検事の申氏は、文在寅氏が廬武鉉政権時代に民情首席秘書官を務めた際、同秘書官室のスタッフとして在籍した。ふたりは個人的にもきわめて近い間柄だ。申氏が辞めれば、大統領のリーダーシップ低下を象徴する出来事となった可能性がある」(青瓦台消息筋)。
結局、申氏は22日になって「去就は大統領に一任する」と表明し、辞意を撤回した。検察人事の中身と辞意撤回の関連性は不明だが、申氏の動きが朴範界長官に対し、相当なプレッシャーとして作用したのは間違いない。
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一方、今回の人事では林恩貞(イム・ウンジョン)大検察庁(最高検)監察政策研究官がソウル中央地検検事に任命された。林恩貞氏は、保守政権時代に実刑判決を受けた現与党系の韓明淑(ハン・ミョンスク)元総理の政治資金法違反事件について、当時の検察捜査チームが証人への偽証強要、強圧的な捜査を行ったとする疑惑に対する監察を行っている。研究官には捜査権はないが、今回の検事任命で捜査権を付与されることとなった。一連の疑惑に対する公訴時効は3月22日に迫っており、同氏は起訴を急ぐものと見られる。
林恩貞氏は昨年10月末、数百人の現職検事らが秋美愛長官に対する批判を検察内部のネットワークに公開した際、李明博元大統領が2007年に嫌疑なしの処分を受けたことなどに言及し、「検察の悪業がとても多く、批判を受けている。自省が必要だ」と書き込んだことがある。